邂逅

5月以来書いていなかったのには訳がある
色々な事があったのだ。


そのいろいろのひとつは父の死であったが
一人の人間が居なくなることは
こうも大変な(煩雑な)事なんだと言うことを、今更ながらに思っている。


入院してから亡くなるまで
一月程度
あっという間過ぎて、後悔する間もないほどだった。
できるだけの事をしたつもりでも
今となっては考える事しきりである。


楽器が弾けて音楽の好きな人だったが
何の曲が一番好きか、僕は知らない。


暗室を持つほどカメラの好きな人だったが
自分の撮った写真でどれが気に入っているか僕は知らない。


母の事はともかく
どんな女性が好きかなんて話した事もない。


一度ぐらい話しておけば良かったな と思う。
そんなわけで
その後色々な過去を探し出して巡り会っている。
その中にある
幼い頃の僕の一枚の写真を見ながら、自分の事も思い出す。


父は賭け事が好きで
夜も家に居ない事が多く
子供には秘密の多い人だったと記憶している。


だからというわけではないが、幼い頃は父の事が苦手で、一緒に居るのがイヤだった。
何かを話されたりしても
父はものを教える仕事の人だと言う事を自覚していたこともあって
間違った知識を指摘されたりすると
他の子供と比べられているようで、恥ずかしくなったり。
多分にこっちの思い込みなんだが...
子供の多くの成分は
思い込みでできているものだ。
もっとも他の大人と話すのも、僕は嫌いだったが。


これでも、お愛想のうまい子供で通っていた。
きっと可愛げがなかったろうと思っている。
大人に対してそうしてしまうことも、自分ながらいつもイヤだったのだ。
だからと言って、周りの子の事を「子供だな」と思うような
(それこそ子供なのだが)
群れたくない居心地の悪さもあった。
まあ、よくある話だ。
子供の頃の話だ。


僕は日常に戻ったが
なにかが以前とは違っている。


一体何が変わってしまったのだろう。


僕の中の少しの部分が戻って来ない。


おそらくなんだかんだ言って
頼りがいなくなった事に対しての自信のなさだろうか。
寝不足で疲れがとれない事や
仕事のペースが戻らない事への焦りだろうか。
今はまだ わからない。


でも
僕自身のための人生の時期は過ぎたのだ。
おそらく。
生きて行く上の、ほんの少しの道程が変わったのだ と思う。


期せずして。


ふらふらと考え続けるつもりはない。
迷うならそのまま歩くのだ。